飲食業で起業をするのは無謀なのか?
起業をする際に飲食分野で起業をしようという方は少なからずいます。
私の知人でも飲食業を営んでいる人がいますし、実際にこの文章を読んでいるあなたも、飲食業で起業を考えている中でこの記事にたどり着いたかもしれません。
私も最近飲食に関する事業アイデアを一つ閃きました。
それはあらゆる角度から眺めてみても、意外と悪くないアイデアのように思えました。
ですが、何かをひらめいた時、本人がいかに甘口の評価を下しているかということについて、私は今までの失敗を通して学んでいますし、今後の人生において同じ過ちを侵さないようにする、という鉄則を敷くことにしています。
そこで飲食業で起業をする上での難易度について、改めて調べてみることにしました。
私は飲食関連で事業を起こしたことはありません。
きっと私が見落としているリスクはたくさんあるのだろうと思って試しに調べてみたところ、私の想像以上のリスクがたくさん見つかりました。
結果として、飲食業で成功するのは大変難しいので、挑戦はしないで別の事業を考えたほうが良いという非常に夢のない結果となってしまいました。
夢はないかもしれませんが、飲食業で失敗すると大きな傷を負うことになるため、結果的には良かったのだと思います。
何より私のポリシーとして、起業するときは失敗しても痛手を負わない環境で行うことを普段から徹底しています。
こちらについては下記の記事で詳しく書いているので、よろしければ参考にしてみてください。
今回の記事では、私が飲食で事業を行うことを断念するに至った要因について書いていこうと思います。
記事の注意点
最初に書いておくと、この記事は飲食業で起業をすることを否定するものではありません。
飲食業で長年働いてきておりノウハウや人脈がある方であれば、成功の糸口を見つける可能性を高めることは可能でしょう。
ただ、私自身の能力では飲食業を経営するにあたって、毎年安定した純利益を出すのは難しそうだと判断し、飲食関連で事業を起こすのは断念しようと思いました。
これは単純に私自身の経営能力のなさに起因するものです。
そのため、あくまで参考程度に読んでいただけたらと思います。
飲食ビジネスで安定して稼ぐのが難しいと判断した要因

では、さっそく本題に入ります。
まず下記に書き出した内容が私が飲食業で安定して収益を出すのは難しいそうだと判断した要因となります。
- 初期費用・固定費の削減が難しい
- 安定して利益を出すのが難しい
- (個人的に)許容できないほどのリスクを常に抱えておくことになる
- 飲食業界はレッドオーシャンで、利益を出すのが難しい
初期費用・固定費の削減が難しい

まずは固定費の削減が難しいということです。
これが飲食ビジネス参入のハードルをとてつもなく上げています。
そもそも飲食ビジネスを始めるにあたって考えるべきことにはどのようなことがあるでしょうか?
私が調べた限りでは下記のようなことをまずは徹底した調査のもと、見通しを立てておく必要があると思います。
- 立地の選定
- 店舗作り
- 商品企画
- 原価管理
- 製造管理
- 仕入れ
- 採用・人事管理
- 衛生管理
- マーケティング
- 資金繰り
ここに書いた項目はすべてどれもとても大切なものですし、きっちり見通しを立てておく必要があります。
なぜならしっかりした調査のもと、見通しを立てなければ、後々資金繰りに困ることになるからです。
ただ、これらの項目はいくら事前にきっちり見通しを立てたところで、そのとおりに必ずうまくいくとも限りませんし、そもそもどれだけ事前に調査したところで初期費用と毎月の固定費には少なくないお金が出ていってしまいます。
まず、店舗づくりを行う上でのテナント費用・リフォーム費用の時点で、それなりに大きな出費となります。
私は基本的に初期投資はいかに0円に近づけられるか?という見方をするため、この時点でハードルは既に高く感じました。
また、商品を提供するためには仕入れが必須です。
仕入れした商品は物にもよりますが鮮度なども関わってくるため、仕入れた分を使い切れなかった場合は廃棄するコストも掛かります。
仕入れた分を廃棄ゼロでうまく使い切れるようにするために、日々どれぐらいの商品を提供すべきなのか?を日々考えていく必要があります。
具体的には、客の回転率や店の営業時間を考える必要があります。
仕入れた分を廃棄ゼロで使い切れればよいわけでは当然なく、毎月の固定費を考えた上で、
- 1日最低何食は売らなければならないのか?
- 客単価はどれぐらいを維持しなければならないのか?
を考える必要が出てきます。
勿論、お客さんはお店側の望むとおりに行動してくれるわけではありません。
酒類を提供する店やカフェのような場所であれば、ドリンク一杯の客に数時間粘られて満席のため、新たな客が入ってくる機会を失ってしまうこともあります。
当然店側の都合で楽しく談笑している客に帰ってもらうことなど出来ません。
安定して利益を出すのが難しい

FL比率を下げる日々の努力が必要不可欠
飲食ビジネス用語でFL比率という言葉があるそうです。
- Fはフードで食材単価のこと
- Lはレイバーで人件費のこと
売上の55%以下に、このFL比率を落とさないと採算が合わなくなり、経営が傾くと言われているそうです。
※FL比率の計算方法は下記のようになります
FL比率(%) = (食材単価 + 人件費) ÷ 売上 × 100
食材単価も人件費も、飲食ビジネスをやっていくなら必要不可欠なものです。
では、具体的にこのFL比率を下げるためにはどのような施策が有効でしょうか?
- 提供する料理の価格を適正まで引き上げ、売上をアップさせる
- FLコスト(つまり、食材原価と人件費)を切り詰める
- 仕入を見直すなど、食材原価を抑える
- 調理オペレーションに無駄がないかを確認し、削れる人件費を更に切り詰める
以上のような施策が考えれます。
もちろん、これらをやったからと言って、必ずFLコストを下げられるかというと、実際のお店の状況・環境にも左右されますので、実施したからと言って効果があるとは限りません.
FLコストお比率をいかに売上の55%以下に保つか?
常連客をつけるための施策を考えつつも、この課題を考えていくのは経営者としてそれなりの力量を求められるなと思いました。
(調べていて感じたのは、飲食ビジネスは全般的な経営スキルをまんべんなく求められる業種だということです。あらゆる知識をフル動員させて経営を考えていく必要があると感じ、安易な考えで飲食ビジネスに参入するのは危険だと判断しました)
立地の重要性

上に書いたFL比率の話もそうですが、それ以外にも考えるべきことは多いです。
その一つが立地です。
立地と言われて、その難しさの本質を理解できる方がほとんどだと思います。
(特にこのサイトを訪ねてこられた方の場合)
これは他のビジネスにおいても同じことが言えると思いますが、こと飲食ビジネスにおいても立地はとても重要です。
料理が良ければ立地なんて関係ない、と言っている人をたまに見かけることがあるのですが、これは明らかに間違えています。
飲食業界にノウハウのある方や、既に固定客がある程度の規模でついているような状況(そんな状況というのは一部の人だけだと思います)であれば、勿論この理論は当てはまらないかもしれませんが、これから飲食ビジネスを始めようと思っている新参者に取って、立地はとても重要です。
- 人通りの多い場所
- ターゲット層が多くいる場所
など、あなたが想定している顧客がいる立地に店を構える必要があります。
ただ、あなたが希望するような場所は同業者も当然狙っているわけなので、当然毎月のテナント料などもこちらの希望通りとは行かないでしょう。
そもそも、近くにどういう店があるのか?などの周辺の調査を緻密に行っていく必要がありますし、調査をしても今後近辺に競合店が立つリスクも常にあります。
つまり立地についていくら調査をして良い立地に店を構えられても、それが未来永劫報われるわけではないのです。
(個人的に)許容できないほどのリスクを常に抱えておくことになる

今までにも書いてきましたが、飲食ビジネスは始める上で決して少なくない初期費用・固定費がかかります。
そして、スタートを切ったあとも競合店の出現や、予想に届かない回転率や売上など、プラン通りに行かないことがが予想されます。
もしスタートしたビジネスがプラン通りに行かなかった場合、舵取りを迫られるわけですが、その時点で決して少なくない費用が出ていっているというのは、かなり精神的に追い詰められる状況であることは想像に固くありません。
飲食ビジネスの場合、ビジネスをスタートさせ、軌道に乗せる間、また軌道に乗ってからもあらゆるリスクに晒されることになります。また、そのリスクに付随する支出が決して少なくないことが、ビジネスの特徴としてあげられます。
上でも書きましたが、私の事業ポリシーとしてなるべく、あらゆる支出とリスクはいつでもコントロール可能な状況にしておきたいというのがあります。
飲食ビジネスを展開していく場合、その点で難しさを感じました。
飲食業界はレッドオーシャンで、利益を出すのが難しい

飲食業界で利益を出していくのがどのようなものかというのは、大手の売上を見ていくことで、なんとなくの規模感を感じ取ることができます。
飲食業界のナンバーワンはゼンショーホールディングス
下記に2010年度の外食上場企業の売上ランキングがあります。
これを見ると、外食上場企業の圧倒的1位はすき家などの運営しているゼンショーであることは誰の目にも明らかです。
そのゼンショーの2019年の売上は 6,304億35百万円
とずば抜けてトップに立っていることが分かります。
次に飲食業界自体の市場規模を見ていきましょう。
下記のページを見てみると、2019年度の飲食業界の市場規模は 34兆2351億円
となっています。
では、ゼンショーの業界シェアはどれぐらいなのかを計算してみましょう。
ここでは細かい数値は端折って計算をしてしまいます。
おおよその規模感だけ把握できれば良いからです。
34,000,000,000,000 ÷ 630,400,000,000 = およそ1.9%
ゼンショー規模の企業でも業界内で 1.9%
しかシェアを獲得できていないことが分かります。
次に外食起業のトップ10の売上をすべて足してみます。
外食上場企業の売上トップ10
順位 | 企業名 | 売上 |
1 | ゼンショーホールディングス | 6,304億35百万円 |
2 | すかいらーくホールディングス | 3,753億94百万円 |
3 | 日本マクドナルドホールディングス | 2,817億63百万円 |
4 | コロワイド | 2,353億34百万円 |
5 | 吉野家ホールディングス | 2,162億1百万円 |
6 | スシローグローバルホールディングス | 1,990億88百万円 |
7 | サイゼリア | 1,565億27百万円 |
8 | トリドールホールディングス | 1,564億78百万円 |
9 | ロイヤルホールディングス | 1,405億78百万円 |
10 | クリエイトレストランツホールディングス | 1,393億28百万円 |
ざっくりした計算となりますが、これらの10社の売上を足すと2.5兆円ほどになります。
飲食業界の市場規模が34兆円であることを考えると、上位10社の売上を足しても10%にも満たないことが分かります。
つまり、この業界には幅広いプレイヤーが参入していることが分かります。
いわゆる、レッドオーシャンの状態です。
このような状況であることから、市場の状態から見ても飲食ビジネスに参入するのはかなり難易度の高いことであることが分かります。
終わりに

さて、ここまで、飲食ビジネスで安定して稼ぐのが難しいと判断した要因
について書いてきました。
事前にこのように必要な情報(リスク、市場規模など)を計っておくことは、新規ビジネスを起こす上ではとても大切なことです。
ビジネスを起こすということは、その人の生活を一変させてしまう可能性もあるため、いくら慎重になってもなりすぎるということはありません。
ただ、最後にビジネスを成功させることは 諦めないこと
、これに尽きると思います。
そもそも、どうしても飲食業をやりたいと心の底から思っている人間は、ここに記載されている内容を見たところで、では逆にこれらのリスクを避ける or 最小限に抑えるにはどうすべきか?と既に考え始めていることでしょう。
最終的にはビジネスを成功させる秘訣は 根性
につきます。
(こういう精神論はあまり好きではありませんが、これは事実だと思います)
もしあなたが飲食ビジネスに参入したいと思っているなら、これらのことも踏まえて、色々と計画をねってみることをおすすめします。