決算手続(売上原価)

決算手続(売上原価)

決算手続(売上原価)

売上原価について

売上原価とは文字通り、売り上げた商品の原価のことを指します。

言い換えると、当期中に減っていった商品の金額ということにもなります。

商品を仕入れた際は、仕入という費用で計算を行いますが、本質的には資産を買っているとも言えます。

(そのため、分記法という、買ったら商品という勘定で計算を行うという方法も存在しています。)

当期中にどれほどの商品(商品分の金額)が減ったのか?

その金額自体が本来の費用としての金額になるため、決算整理時にこの分の金額、つまりは売上原価を算出する処理を行います。

売上原価の計算方法

売上原価の計算方法は下記のとおりです。

売上総利益 = 売上高 - 売上原価

この売上総利益 は、いわゆる粗利のことを指します。

この式に出てくる売上高 は売上勘定を見れば確認できますが、売上原価 はまだ分かりません。

売上原価の計算式

この売上原価を求めるための式は下記のようになります。

期首商品棚卸高 = 当期商品仕入高 - 期末商品棚卸高
  • 期首商品棚卸高は、期首に残っていた商品のことを指します
  • 当期商品仕入高は、当期中に仕入れた商品のことを指します。
  • 期末商品棚卸高は、期末に売れ残った商品のことを指します。

ちなみに現実世界では商品を別の用途で使ってしまった、あるいは盗まれたなどの理由から商品が減ってしまうケースも考えられますが、それについては簿記 3 級の学習範囲から外れるため、考えないこととします。

つまり簿記 3 級では商品は売れるか、売れ残るかの二択しか考えないこととなります。

三分法を採用している場合の決算整理について

以上のことから、三分法を採用している場合の実際の決算整理の流れについて見ていこうと思います。

実際に見ていく必要がある値は下記となります。

  • 売上勘定の残高
    • 当期の売上高(純売上高)を示しています。
      • 純売上高 であるため、返品された部分は差し引かれています。
  • 仕入勘定の残高
    • 当期商品仕入高(純仕入高)を示しています。
      • 当期内の純粋な仕入の残高を示しています。返品した部分は差し引かれています。

これらの値をもとにして、費用としての残高を売上原価に修正していく必要があります。

そして、この売上原価に修正していく作業ですが、2 種類の方法があります。

この方法をそれぞれ学習していこうと思います。

仕入勘定を用いて売上原価を計算する方法

仕入勘定を用いて売上原価を計算する方法について学びます。

まずは実際に仕訳と転記の処理を見ながら仕組みを学んでいきます。

  1. 期首商品棚卸高は ¥0 である
  2. 当期商品仕入高を ¥1600 である。なおこれは掛けとなる。
  3. 当期の売上高は ¥2,000 である。なおこちらも掛けとなる。
  4. 期末商品棚卸高は ¥200 である。

この場合1,600 - 200 = 1,400 となり、売上原価は¥1,400 となります。

つまりこの場合は¥1,400の商品が¥2,000で売れたということになります。

実際の仕訳についても見ていきましょう。

なお、期首の仕訳は不要であるため仕訳不要 としています。

借方科目金額貸方科目金額
1仕訳不要
2仕入1,600買掛金1,600
3売掛金2,000売上2,000
4繰越商品200仕入200

ここで登場する繰越商品は決算整理でしか使わない勘定科目となります。

ここで繰越商品について注目してください。

ここで売れ残った商品については資産として扱います。

そのため残った仕入の費用は資産として考えるために取り崩して、借方へ繰越商品として処理します。

(ちなみに売れ残って今後は売れないという商品については 2 級以降で扱うことになります。3 級では売れ残った商品はすべて資産として扱います)

そしてこれらの仕訳をもとに総勘定元帳への転記を行ってみます。

繰越商品

3/31仕入2003/31次期繰越200
200200
4/1次期繰越200

仕入

4/1~3/31買掛金1,6003/31繰越商品200
損益1,400
1,6001,600

売上

3/31損益2,0004/1~3/31売掛金2,000
2,0002,000

さきほども書きましたが、ここで登場する繰越商品は決算整理でしか使わない勘定科目となります。

そのため、繰越商品については期中はずっと放置されたままの状態となります。

仕入勘定を用いて売上原価を計算する方法は矛盾を含んだ考え方

ちなみに仕入で登場している損益勘定の ¥1,400 についてですが、これが売上原価の金額となります。

仕入れの損益勘定から売上原価を算出するということに違和感を感じる方もいるかと思います。

実際にこのやり方は矛盾を含んだやり方として簿記の世界では認識されています。

後述する売上原価を用いて計算するやり方の場合、この矛盾点は解消されていますが、仕入勘定を用いて売上原価を計算する場合は、この矛盾を受け入れて計算を行っていくことになります。

先程は期首商品棚卸高が ¥0 の状態でしたが、今度は期首商品棚卸高が ¥200 の状態での処理を見ていこうと思います。

上の例の続きという形としてみていただけたらと思います。

  1. 期首商品棚卸高は ¥200 である
  2. 当期商品仕入高を ¥1800 である。なおこれは掛けとなる。
  3. 当期の売上高は ¥2,500 である。なおこちらも掛けとなる。
  4. 期末商品棚卸高は ¥500 である。
借方科目金額貸方科目金額
1仕訳不要
2仕入1,800買掛金1,800
3売掛金2,500売上2,500
4仕入
繰越商品
200
500
繰越商品
仕入
200
500

ここでの 4 について注目です。

まずは 1 段目の借方に仕入、貸方に繰越商品の仕訳は前期からの繰越に関する処理となります。

これは 1 年前の在庫に関する処理になりますが、ここにあるのは前期繰越されてきた商品となります。

この 1 年前の在庫は売れていると仮定して、振り替えます。

仮に売れなかったとしても、その後の商品で処理が行われるので問題ありません。

そして 2 段名は期末に売れ残った商品となります。

1 段目と逆の形で処理を行います。

前期繰越が ¥200 であり、今期の仕入高が ¥1,800 ということであり、下記のような計算式で期末商品棚卸高は求められます。

(問題文にも載っていますが、あえて計算を行ってみます)

2,500 - (1,800 + 200) = 500(期末商品棚卸高)

そして当期商品棚卸高が求められれば、下記の計算で売上原価を求めることが可能です。

200 + 1800 - 500 = 1,500(売上原価)

よって、売上原価が ¥1,500 の商品を、2,500 で売ったということになります。

そしてこれらの仕訳をもとに総勘定元帳への転記を行ってみます。

繰越商品

4/1前期繰越2003/31仕入500
3/31仕入200次期繰越500
700700
4/1次期繰越500

仕入

4/1~3/31買掛金1,8003/31繰越商品500
3/31繰越商品2003/31損益1,500
2,0002,000

売上

3/31損益2,5004/1~3/31売掛金2,500
2,5002,500

仕入れの損益は売上原価となりますが、先程の計算結果でもある¥1,500となっています。

今回はついでに損益勘定の転記も行ってみようと思います。

損益

3/31売上2,5003/31仕入2,000

しっくりくりし

ちなみに上に書かれた下記の仕訳ですが、ここは最初のうちは手順を覚えるのが大変に思うかもしれません。

4仕入
繰越商品
200
500
繰越商品
仕入
200
500

この並びを覚えるための語呂合わせとして、しっくりくりしという言葉があります。

上から順番に勘定科目を見ていったときに下記のような並びとなることから、そのように呼ばれています。

  • し – 仕入れ
  • くり – 繰越商品
  • くり – 繰越商品
  • し – 仕入

三分法の由来

なお、普段用いているこの三分法という方法は繰越商品、仕入、売上の 3 つを用いているということから、三分法という言葉で呼ばれています
併せて覚えておくと学習の理解につながるかもしれません。

売上原価勘定で売上原価を計算する方法

仕入勘定で売上原価を計算する方法は矛盾を含んだものでしたが、こちらはその名もズバリ売上原価という勘定を使用して売上原価を計算する方法となります。

それでは、上に扱った例と同じパターンで、さっそく仕分けを行ってみましょう。
(損益の振替も追記しています。)

  1. 期首商品棚卸高は ¥200 である
  2. 当期商品仕入高を ¥1800 である。なおこれは掛けとなる。
  3. 当期の売上高は ¥2,500 である。なおこちらも掛けとなる。
  4. 期末商品棚卸高は ¥500 である。
  5. 損益の振替を行う
借方科目金額貸方科目金額
1仕訳不要
2仕入1,800買掛金1,800
3売掛金2,500売上2,500
4売上原価
売上原価
繰越商品
200
1800
500
繰越商品
仕入
売上原価
200
1800
500
5売上
損益
2,500
1,500
損益
売上原価
2,500
1,500

ここでの 4 の決算整理での仕訳について注目です。

まず、1 段目で扱っている繰越商品は前回同様、期首に売れ残っていた商品となりますが、これは売れて出ていった仮定して扱います。そのため繰越商品を貸方に記述しますが、このときにこれは売れて出ていった商品(資産)を表すことになるので、借方に費用として売上原価勘定を用います。

次に2段目になります。

これは1年間に仕入れた金額となります。1年間で仕入れたという勘定になりますが、最終的な費用は売上原価となるので、一旦は仕入勘定の残高を消して、売上原価に集めます。

この段階で、売上原価が合計 ¥2,000 となります。
ただ、¥2,000 もの商品を売り上げたわけではなく、売上原価自体は上の例にもあるように ¥1,500 です。

というわけで、3段目の仕訳を行います。

期末に売れ残っている部分は資産となりますので、借方に繰越商品、貸方に売上原価を記述していきます。

5の損益振替についての計算は下記のとおりです。

1 段目の売上については、今期の売上を集めて損益勘定に振り替えています。

2段めの売上原価については、今回の場合借方の合計の売上原価¥2,000 を貸方の売上原価¥500で引いて算出した ¥1,500 を損益勘定で振り替えています。

売上原価に対して損益を振り替える点に注意が必要です。

そしてこれらの仕訳をもとに総勘定元帳への転記を行ってみます。

繰越商品

4/1前期繰越2003/31繰越商品500
3/31売上原価200次期繰越500
700700
4/1前期繰越500

仕入

4/1~3/31買掛金1,8003/31売上原価1,800
1,8001,800

売上

3/31損益2,5004/1~3/31売掛金2,500
2,5002,500

今回新たに登場した売上原価の仕訳も行います。

売上原価

3/31繰越商品2003/31繰越商品500
仕入1,800損益1,500
1,5001,500

仕入勘定を用いた売上原価の計算では、仕入れ勘定の損益で売上原価の算出を行いましたが、今回の方法では売上原価勘定の損益勘定がそのまま売上原価の値となります。

これは直感的でわかりやすいですよね。

最後に損益勘定の転記も行います。

損益

3/31売上2,5003/31売上原価1,500

うりくりうりしくりうりげん、うくうしくう

ちなみにここについても語呂合わせを用いて覚える方法が開発されています。

4売上原価
売上原価
繰越商品
200
1800
500
繰越商品
仕入
売上原価
200
1800
500

上から順に 売上原価 -> 繰越商品 -> 売上原価 -> 仕入 -> 繰越商品 -> 売上原価となっていることから、

  • うりくりうりしくりうりげん

あるいは頭文字1文字だけをとって、

  • うくうしくう

という語呂合わせが開発されています。

これらの勘定科目の並びを覚えるのは最初慣れていないと大変なので、私自身この語呂合わせを活用して学習に励んでいます。

分記法の場合は決算仕訳は不要

分記法を用いた場合、仕入や売上の際に商品の勘定科目で仕訳を行います。

また、売上の際の利益計算については、商品売買益の勘定科目を用いて、売上と利益を区別して仕分けを行うため、三分法のように決算整理での利益の計算は不要となります。

こちらも頭に入れておくと良いかもしれません。

簿記はひたすら解きまくって学ぶことが重要

この簿記学習ノートでも何度か書いていることですが、簿記はひたすら問題を解いて体に染み込ませていくことが重要です。

今回の売上原価についても、頭で理解しているのと体で覚えているのでは、実際に問題に直面したときの頭の思考スピードがだいぶ異なってきます。

私自身、頭で理解しているだけでは問題に直面した際にすぐに体が動かずに苦労しました。

ひたすら問題集などを利用して解き続けていくことが重要となりますので、共に日々の鍛錬を怠らずに頑張っていきましょう!